コジツケ解雇に和解

Xさんは、設計施工もする専門商社であるY社に、専門技術を持つ有資格者として仕事をしていましたが、仕事上でY社に損害を与えたという理由(→多くは、予定利益が上げられないような見積りや施工だったというコジツケ)で、Y社から940万円の弁済を求められ、かつ解雇されました。

 

 まず、Xさんは、労働局で「940万円の債務は存在しない」という確認を求めて、あっせんを申請しましたが、Y社が応じず打ち切りとなり、次は労働委員会で同様の調整を申請しようとしたのですが、あっせんは2回できません。ここで、私への相談を示唆され、お会いしました。
 あっせんという手段はもう使えないので、私は、直接交渉での解決を図ることにしましたが、個別労働紛争では限界があると判断し、連合いしかわユニオンに相談しました。その相談の結果、連合石川ユニオンは、労働審判での解決を助言し、その顧問弁護士である甲氏を紹介し、支援することになりました。
Xさんは、労働審判で、「債務不存在と共に、未清算の立替金、社長の暴行による自動車修理代・慰謝料、私物の返還」を請求しました。この内、私物については、別途、労働基準法第23条(退職時の金品の返還)違反として、労働基準監督署へ申告し、その命令に基づいて、私も立会いの上、Y社から返還させました。

 

 労働審判では、審判官は、開始冒頭に、申立内容が多岐に亘り、証拠調べ等のことを考慮すると、3回の審判で十分な審理ができないとして、速やかに和解をするように求めてきました。労働審判は、その制度の特質として、まず調停(和解)ですので、和解を求めるのは解かりますが、最初から、十分な審理ができないとされては、困ったものです。労働審判は、今年の4月から始まった制度なので、審判の進め方は、各地裁で多様な実態があるようです。
 結果として、証拠調べは行われず、代理人間の和解交渉になってしまいました。和解交渉の経緯はいろいろあるのですが、その結果は、「XさんがY社へ100万円を支払う」という内容になりました。100万円の支払いは、Y社の当初請求より大幅な減額であるので「相対的には勝ち」という見方もありますが、Xさんにとっては、そもそも支払う理由のないお金であったという主張を踏まえると、「納得の行かない負け」です。

 この事件の反省としては、『労働審判の場合、3回の審判で完結することを考慮して、争点を明確に、かつ絞り込むことの重要性を考えておかなければならない』ということです。
 今後も、弁護士の協力が得られるならば、積極的に労働審判を活用して行くと言う、私の考えは変わりません。この事件の反省を踏まえて、更に労働審判に係わる勉強をします。